家来日記
※月◎日
昼食後王子にデザートとしてみかんの皮を剥いて差し上げた。
こともあろうにその時突然ガーラが我々の部屋に訪れた。
お心やさしい王子は俺がむいて差し上げたみかんをガーラに分け与えてしまった。
ガーラの為にむいてやるみかんなどひとかけらもないというのに、王子には俺の誠意が伝わらないのだろうか。
まだまだ修行がたりないようである。
※月○日
浴場にて王子のお背中をお流ししている時にふと気づく。
背中に見慣れない真新しいひっかかれたような傷跡が。
この傷はなんだと尋ねさせていただいたところ王子は笑うばかりでなにも答えあそばされない。
俺を心配させないためのお心遣いだろうか。
また一つ王子の優しさに触れさせていただいた。
※月▲日
今日は王子とともに、ガーラとその弟君のジュネ殿と地下迷宮探索に出向いた。
無鉄砲の王子を援護するのは一苦労だ。
王子が無謀な突進をする前に俺は魔法で怪物どもを弱らせる必要がある。
俺の体を気遣ってかジュネ殿がしきりに気にかけてくださり、少々の傷を負ってもすぐに治療してくださった。
兄弟でもこうも性格が違うものだろうか。
ガーラにも少しは彼の謙虚さを見習って欲しいものである。
※月●日
今日は王子とともに食料の調達に総合食品売店に赴いた。
俺が新鮮で栄養価の高そうな野菜・果実類を選んでいると王子は篭一杯にメロンパンを持ってこられた。
そんなものよりこっちの本物のメロンが良いのではないかと尋ねさせていただいたところそれは駄目だという。
王子は次々と正体不明の菓子類や身体に良くないであろう炭酸飲料類を選んでは篭に入れてしまう。
なんということだろうか、王子の味覚は狂ってしまわれたのだろうか。
だとしたら常日頃料理を作って差し上げている俺の責任だろう。
彼を叱りつけて元の場所に返すように申し出させていただくと王子は御立腹なられた様子で強引に清算所に篭を持っていってしまった。
渋々商品を買い上げたところご機嫌は直られたか、やはりこれは王子としてあるまじき光景だ。
なんとせねばならないのだが……。
※月◆日
昨晩また王子が夜中にこっそり部屋を出てしまわれた。
朝になってガーラの所にいくと彼はまたそこで一晩過ごしたようである。
いったい王子はガーラの所で夜通しなにをなさっているのだろうか。
奴のところで一晩過ごした朝は非常にけだるい様子で部屋に帰るなり眠りにつかれてしまう。
よくない遊びでも教えられているのだろうか。
朝迎えにいくと非常に傷ついた顔をして俺を見るのは何故なのだろう。
俺は無意識に王子のことを傷つけてしまっているのだろうか。
俺の側にいるよりもガーラの側で寝た方が安心するのだろうか。
俺の気遣いが足りないというのなら言って欲しいものである。