ジュネ夫観察記
青字:父親ザハンの添削
俺はセリオス。突然ガーラ兄貴の奴に頼まれて、次兄のジュネ夫の身辺調査をすることになった。
なんでも、この頃ジュネ夫は兄貴の嫌いな奴にほれてしまったらしい。
それが気に食わなくて、悪い道に走らないように見守り、あわよくば実力行使でやつの恋路を邪魔しろってーんだ。
なんで俺がそんなことしなくちゃなんねーんだ、コラ!! ←暇してるからでしょう
いったい、なんだってーんだ、ぁあ!?
第一、ジュネ夫と兄貴はいつも一緒にいるじゃねーか!!
不満タラタラで兄貴のやつにガンくれてやったら、あの変態兄貴俺のケツにたいして立派でもないコカンを押し付けてきやがった。
俺は掘るのは構わんが掘られるのは嫌だ!!
しょーがねえから、しばらく兄貴のワガママにつき合ってやることした。
★月○日 快晴
今日はとてもいい天気だ。こんな晴れた日は、いつもの路地裏に行って、冴えない冒険者や小悪党どもをいびって遊ぶに限る。
しかしこれからはそうもいかなくなった。
兄貴のどーでもいい命令のせいで俺の楽しみが減ってしまった。
とっとと仕事を終わらせて遊びにいかねばならん。
午前中の家事仕事を終えるとジュネ夫は、そそくさと一人で外に出かけていった。
なんだ?さっそくどこかで噂のカレシと逢い引きか?
そう思ってこっそり後を着いていったんだが、奴が行った先は、近所のスーパーだった。
タイムサービスをやっていて、キャベツが一個5ゴールドだった。
主婦にもまれてなんとかキャベツをゲットしたジュネ夫の微笑みは、生き別れていた兄弟にでもやっと逢えたのごとく輝いていた。あんた、いったい何をそんなに喜んでいるんだ……。もしかして、やつはキャベツから生まれたのか?人間ってのは、そういう人種もいるらしいからな。←人は蓮の花からも生まれますよ。
この日のジュネ夫の行動に、不審な点はナシ!!
よって俺はライと一緒に街に遊びにいく!!
★月◎日 晴
今日はちょっと涼しい風が吹いていた。
こんな日はライを連れて川の土手を歩くのがいいな。
そしてオンナ(ローネ)は川に重しをつけて沈ませるのがよい。殺してもしなねーようなゴキブリみたいな奴だから沈むかどうかあやしい所だがな。
今日もジュネ夫は主婦業に追われていた。
ちったあ誰か手伝ってやれよ、洗濯くらい、なあ?
だいいちそういう主婦業はオンナのする仕事だ。←男尊女卑はよくありません。あのくそ女がやりゃあいいだろうがー。
洗濯を終えてジュネ夫は幸せそうな微笑みを浮かべながら指先の手入れをしていた。うわっ、なんだこの男。主婦業に幸せを感じているのか?
明日から何か手伝ってやろうかと思ったが←嘘はよくありませんよ。やつがあれで幸せなら邪魔はしないほうがいいと思った。
今日もジュネ夫の行動に不審な点はナシ!!
よって俺はライとデートをする!!
★月■日 雨
今日は雨だ。つまらない。外で遊べないじゃないかよ。←セリオスくん今いくつです?
暇なので物陰からジュネ夫を観察していると、やつはぼんやりと窓の外を眺めてため息をついていた。
おお? いよいよ恋煩いかよ?
そう思ったのも束の間、やつは洗濯ものが乾かないと嘆いていた。
やっぱりあいつはもう駄目だ、主婦になりきっている。←よい事ではないですか。
たとえ雨だとしても、おつかいには行かなくてはならないようで、ジュネ夫は一人で傘をさして外に出ていった。
俺も嫌々後をつけていくと、いつものスーパーでジュネ夫は挽肉とパン粉とたまねぎなどを買った。今夜のオカズはハンバーグだ。
レジを通り品物を袋に詰めていると、背の高い長髪の男がジュネ夫に声をかけた。あの顔あのチャイナ服あの声……兄貴のツレの王子様の連れだ。
ジュネ夫のやつ、うれしそうにホホ染めてやがった。
王子様の家来君はこれから買い物らしく、ひとことふたこと面白くもない挨拶を交わすと店の中に消えていった。
ジュネ夫はしばらくやつの後ろ姿を見送っていたが、そのうちため息交じりに寄り道もせずに家に帰った。ああそうか、カタオモイってーやつなんだな。少女漫画でそんなの読んだことあるぞ。
おかげで今日のハンバーグは黒コゲ気味だ。なるほど、ジュネ夫のやつ、奴の事で頭がいっぱいになると料理失敗しやがるんだな。
こりゃーとっとと諦めさせるしかないな。
主婦は恋何ぞしてはいかんのだ。それはフリンっていうものすごく悪いことなんだって兄貴も言ってたしな。←旦那は誰なんですか
うまいメシのために、ジュネ夫のフリンを止めないとな!!
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