罰に次ぐ罰
罰が軽かったために少々白けてしまった宴会は終わりにされ、一同はそれぞれの帰るべき場所へと戻っていった。
もう二度とこの家のパーティーなど参加しないぞと心に刻み、ルインフィートとハルマースもこの屋敷を後にした。
外は既に深夜で、空に美しい満月が顔をのぞかせている。ルインフィートは安心して強烈な眠気を催して、大きなあくびを漏らした。
「帰ったらすぐに寝ちゃいそうだ」
そう言葉を漏らすルインフィートを、ハルマースは自分の元へ引き寄せた。
「……王子」
ハルマースはルインフィートの前に立ち、その顔をじっと見つめた。
「今晩は俺に服従してもらう」
「……え?」
ルインフィートがきょとんそしている間に、ハルマースは彼にそっと口付けした。
夜道で人がいないとはいえ、予想外の彼の行動にルインフィートは困惑した。
「お、おまえ、こんな外で……」
「早く帰ろう」
ハルマースはいつになく積極的にルインフィートの手を引いて、借りている部屋へと戻っていった。
部屋に戻るや否や、ハルマースはルインフィートを寝台に押し倒した。
「これは罰ゲームですから、決して私の本意ではありません。
お許しくださいルインフィート様」
「な、なんだよそれ!」
立場を気にしているのだろう。ハルマースはいちいち理由を付けながら、ルインフィートの服を器用に脱がしていった。首筋に口付け、強く吸い上げて、所有の証を残した。
ルインフィートは身を捩り、ぎゅっと敷布を握り締めた。
「罰ゲーム、ですからね」
念を押しながら、ハルマースはルインフィートの胸の突起を摘み、押しつぶすように転がして弄んだ。ルインフィートは顔を横に向け、ぎゅっと瞼を固く閉じて眉根を寄せて甘い痺れに耐えようとした。
「感じているなら、ちゃんと反応を見せてください」
ハルマースは顔を逸らしたルインフィートの顎を掴み、正面を向かせた。はっとなって開かれたルインフィートの瞳は潤んでいた。
薄く開かれた口元から僅かに甘い声が漏れる。
「はっ……」
ハルマースはいとおしげにルインフィートの髪を撫で上げ、唇を重ねた。彼は欲望の赴くままに舌を絡ませ、角度を何度も変えながら強く深く口腔を貪った。
顔を離すと、ルインフィートはとろんとした目でハルマースを見つめていた。
ハルマースはうっすらと微笑みを浮かべると、その手を下肢へと伸ばした。太ももの内側を撫でさすりながら脚を開かせると、ルインフィートはくすぐったそうに身をくねらせた。
興奮を覚え始めたルインフィートの性器に指を絡ませ、いつくしむように陰嚢をやわやわと揉んだ。
「は、ハルマース」
ルインフィートは急に恥ずかしさを感じ、ハルマースから再び顔を背けた。しかしハルマースはそれを許さず、再び顔を自分に向けさせた。
「あなたの感じている顔を見たい」
そう告げると彼は、ルインフィートの雄を扱き始めた。ゆっくりと、徐々に固くなるのを確めるかのように。
ルインフィートは奥歯を噛み締めて、声が漏れそうになるのを耐えていた。ハルマースはそんな彼の態度に眉根を寄せて不服そうな顔をする。
「耐えなくていいんですよ」
ハルマースはおもむろにルインフィートの身体をうつ伏せにし、腰を上げさせて尻を突き出したような格好にさせた。
普段誰も見る事が出来ようもない尻の孔に顔を近づけ、舌を這わせるとルインフィートの背中がびくりと揺れた。
「や、やめろ、そんなところ……ッ」
ルインフィートは恥ずかしさに身を焦がし、逃げ出したくなったが、【リアルすごろく】の罰ゲームのルールが効いているのか、ハルマースの望みに逆らうことが出来ずに動くことが出来なくなっていた。
ハルマースはルインフィートの下半身を徹底的に弄んだ。指を彼の内部深くに挿し込み、前立腺と思わしきところを何度も擦り付けた。
「――ッ……ふ……あ」
ルインフィートはたまらず甘い声を出し、びくびくと腰がのたうつのを止められなかった。先走りが彼の雄から滴り落ちる。
ハルマースはルインフィートの絶頂が近いのを悟り、彼の前をぎゅっと握りこんで開放を制した。
「いや……ああッ」
ルインフィートは首を横に振り、ハルマースに懇願した。ハルマースはルインフィートの身体を仰向けに戻し、彼を制したまま意地悪く笑った。
ルインフィートの呼吸は荒く、鍛え上げられて引き締まった胸が辛そうに上下していた。柔らかな金髪は乱れ、汗に濡れて前髪が額に張り付いていた。羞恥と高揚のせいか頬は赤く、目元は涙を滲ませて艶やかな色を見せていた。
「良い光景ですよ」
ハルマースのその言葉に、ルインフィートはびくりと身体を震わせた。恥ずかしさに顔を背けたいのに背けることが出来なかった。
ハルマースはルインフィートの上に覆いかぶさるように身体を重ね、顔を近づけて彼の耳元で囁いた。
「あなたをこんなふうにできるなんて」
ハルマースは再びルインフィートの口腔を貪った。ルインフィートも息を詰まらせながら、彼の求めるままに従った。
やがてハルマースの顔の位置が下へと下がり、乳頭を甘噛みして舌の先で転がすようにして嬲る。ルインフィートはそんなふうに自分を焦らすハルマースの頭を掴み、その髪を引っ張った。
「も、もう……いい加減に……」
しかしハルマースはルインフィートに不敵な微笑みを見せた。
「夜が明けるまで、たっぷりとあなたを堪能させて頂きます」
「そんな……ッ」
ルインフィートは悲鳴に近い抗議の声をあげた。
ハルマースのなぶり殺しのような愛撫はじわじわと執拗に続けられ、ルインフィートが開放を許されたのは空が明るみ始めた頃だった。
ぐったりとして動く気力のなくなってしまったルインフィートの身体を、ハルマースはこれ以上ないといったようなうっとりとした表情で抱きしめた。
「これは、罰ゲームですからね」
「酷い、酷すぎるよ」
ルインフィートはハルマースにぐったりと身体を預けながらも、非難の声を浴びせた。
「ゲームゲームって、俺の気持ちなんかどうでもいいのかよ」
「俺のことが嫌いになりましたか?」
ハルマースはそう言いつつも、微笑みを浮かべてルインフィートの髪を優しく撫でた。
ルインフィートはため息を漏らし、自分を抱くハルマースの腕をそっと掴んだ。
「大好きだよ、ハルマース」
眠りについて一時間もしないうちに、けたたましく戸が叩かれて二人は叩き起こされることとなった。
部屋に訪れたのはガーラだった。彼はがっちりと鎧を着込み、剣を携えていた。寝不足と疲れでげっそりした二人を見て、ガーラは意地悪く鼻で笑った。
「行くぞ、地下迷宮」
「今日は勘弁してくれ」
ルインフィートが大きなあくびをしながら、ガーラに言った。つられてハルマースも大きなあくびをする。
「あれ、昨晩は夜更かしでもしたのかい?
まさかサントアーク人が、フケツな男性同士の性行為になんて及んだりしないよなあ」
わざとらしいガーラの言葉に腹を立てて、ハルマースは彼を睨みつけた。
「今日はお前に付き合う気はない。地下迷宮に行きたかったらコテツでも連れて行ったらいいだろ」
「……今度俺の母さん、サントアークに行くって言ってたなあ。
お前達の様子を報告してもいいんだぜ?」
ガーラの意地の悪い言葉に、二人はムカムカと苛立ちを覚えながらも、関係をチクられては困るので彼に従うしかなかった。
彼らにとってこの日の迷宮探索は本当の罰ゲームのようだった。