王子様のおつかい
ルインフィートはザハンに事情を話し、彼に助けを求めることにした。
「実は……」
ルインフィートはザハンにハルマースのことを言った。話を聞いてザハンは沈痛な表情になり、ルインフィートを励ますように優しく肩を叩いた。
「風邪ごとき、私の力で治してあげましょう」
ザハンの頼もしい言葉を聞いて、ルインフィートはぱっと表情を和らげた。彼を味方にすることが出来れば、怖いものなどない。
「ありがとう、ザハンさん!」
ルインフィートは心からザハンに感謝して、手を取って握り締めた。
「ふふ……」
ザハンの瞳が不気味に光った事に、ルインフィートはこの時気がつかなかった。
ルインフィートはザハンを自分の部屋に招き、寝室で眠るハルマースに引き合わせた。ハルマースは相変わらず熱にうなされており、赤い顔をしていた。
思わぬ来訪者にハルマースの瞳が不安に揺れた。彼もまたザハンに対して畏怖の念を抱いている。
「ハルマース、ザハンさんが治してくれるって」
ルインフィートは嬉しそうな声でハルマースに言う。しかしハルマースは良い顔をしなかった。
「心配しないでください。痛くも痒くもないですよ」
ザハンは笑顔を見せて、ハルマースに手をかざして呪文を唱え始めた。
ハルマースからどす黒い影が浮かび上がり、身体から離れた。ザハンはその黒い影を、側にあったポットのなかに放り込んで、手で押さえ込んで蓋をした。
「終わりましたよ」
ザハンはニコニコと笑っていた。ハルマースの体調も何事もなかったかのように元に戻り、彼はきょとんとしてしまった。
「あ、ありがとうございます」
ハルマースは素直に礼を述べた。
「いえいえどういたしまして」
ザハンはニコニコしながら、ハルマースに取り付いていた病魔を封じたポットをゴミ箱に捨てた。
「えーと、それでは」
不意に、ルインフィートはザハンに腕を掴まれた。ザハンは相変わらずニコニコしており、ルインフィートはきょとんと固まった。
「お代を支払ってもらいましょうか」
「え」
ルインフィートはなおもぽかんとしていたが、ハルマースはやっぱりといったようなため息をついた。
「おいくらですか」
ハルマースは財布を手に取った。物凄い金額なのだろうと思い、はらはらする。
「お金は要りませんよ、ハルマース君」
ザハンはニコニコとしながら、ハルマースに財布を置くように促した。そして彼はルインフィートの腕を強く引っ張った。
「王子のお身体を一晩拝借しますよ」
「なに……!」
二人は引きつった。特にルインフィートは、一体何をされるのか分からないという恐怖に駆られて青ざめた。
「心配しなくてもちゃんと、五体が揃った状態でお返ししますよ」
ザハンの微笑みが二人の目にやたらと不気味に映った。
「ではまた明日」
ザハンは強引にルインフィートを引き摺り、部屋から立ち去った。
「うわーん! ハルマース!」
ルインフィートは楽にハルマースを治療することと引き換えに、悪魔に魂を売ってしまったのだという事にようやく気がついた。
ルインフィートはザハンの部屋に強引に連れ込まれた。まわりには実験用具のようなものが散乱し、冷たい実験台のような場所で服を脱がされて身体を革のベルトで拘束された。
「ざ、ザハンさんにこんな趣味があったとは」
ルインフィートは小さく呻いた。ザハンは相変わらずニコニコと笑い、ルインフィートの頭を不気味に優しく撫でた。
「私の好きな人はいつも貴方の話ばかりするんですよ。
妬いてしまいます」
「え……?」
当然ながらルインフィートはザハンの好きな人など知らなかった。
「……今判らせてあげますよ」
ザハンは突然冷たい声をルインに浴びせた。そして球状の口枷をルインフィートに嵌める。
「ふ……ふあ!?」
言葉を出そうとすると口に嵌められた珠がくるくると回り、呆けたような声しか出せなくなった。
ザハンはルインフィートの身体をうつ伏せにし、尻を突き上げさせた。どろどろとした液体を尻に塗りこみ、そこに男性器を模った張形を挿入した。
「は、はふ……!」
突然のことにルインフィートは悲鳴を漏らした。しかしザハンは冷酷に、その張形を奥まで挿入すると、そこに蓋をするように革を巻きつけて外れないように拘束した。
そして、その張形は魔法がかけられているのか、まるで生き物のようにルインフィートの中で蠢いた。
「はぁ、はぁ……!」
「気持ち良さそうですねえ」
ザハンはくすくすと笑いながら、ルインフィートを再び仰向けにする。男性器が勃ちあがり、主張している。
「少し、我慢してもらいますよ」
ザハンはルインフィートの性器に、革を巻いて金属製の輪を施し、射精しようとするのを戒めた。
「はう……ぅん――」
ルインフィートは酷く辛そうに身をよじってのた打ち回った。尻に埋められたものが容赦なく内側から彼を責め立て、しかし開放は許されない。
そんな様子のルインフィートを眺めてザハンは冷たく笑った。
「さあ、行きますよ」
ザハンはどこからともなく大きなカバンを用意して、そこに拘束されたままのルインフィートを詰め込んだ。
「ふ――ッ、ふ――ッ……!」
ルインフィートは気が狂いそうな恐怖と快感に、ただひたすら耐えるしかなかった。
ルインフィートがカバンから出されたのは、とある男の寝室だった。
見覚えのある、懐かしい部屋の作りが目に焼きついた。
全身を拘束され、身体の痺れに身を震わせ、口枷を嵌められてなす術もなく涎を垂らした顔を部屋の主に見られてルインフィートは羞恥を通り越して絶望を感じた。
「王……子……?」
「は……ふ……」
ルインフィートは涙をぼろぼろとこぼした。その名前を呼びたくても呼ぶことができない。ダル、と。その一言が。ルインフィートの目の前にいる男は、ハルマースの父親の、サントアークの将軍ダルマースだった。
ルインフィートにとってダルマースはかけがえのない存在だった。ルインフィートが命を奪われそうになったとき、助けてくれた命の恩人でもある。彼にとってダルマースは、父王よりも誰よりも尊敬している理想の男であり、目標だった。
「ふふふ、ダル……面白いでしょう。
この子は王子を模して作った人形ですよ」
ザハンは相変わらずニコニコと微笑んでいた。ルインフィートはその言葉に引きつり、ザハンから顔を背けた。
「悪趣味だな……ザハン」
部屋の主……ダルマースは嫌悪感をザハンに向けた。その声にルインフィートは少し救われたような気がした。
「辛そうだな……かわいそうに」
ダルマースはルインフィートの顎を掴み、哀れみの目を向けた。その視線が、びくびくと震える下半身に向けられるとルインフィートは恥ずかしさに気が遠くなりそうだった。
「二人で可愛がってあげましょう」
ザハンは微笑みを浮かべながら、身に纏っているローブを脱いだ。しなやかな身体が明かりに照らされる。
「罪悪感に心が張り裂けそうだ」
ダルマースはルインフィートを引き寄せて、優しく抱きしめた。ルインフィートの身体がぶるりと震える。
助けて欲しい、開放して欲しいと、ルインフィートはダルマースに目で訴えた。
「良い顔をするものだな」
ダルマースはルインフィートの頭を優しく撫でた。
「――今夜はお前を可愛がってやろう」
「――――っふ」
ダルマースがルインフィートの口枷を外した。ルインフィートは咄嗟に顔を上げたが、そこには違うものが放り込まれた。
「んうッ……!!」
頭を押さえ込まれて、ルインフィートはダルマースのものを咥えさせられた。容赦なく喉の奥に性器を突きつけられ、ルインフィートは嗚咽を漏らした。
声を出す隙など与えてもらえず、口内を犯されているときに、体内の張形がにわかに激しく動き始めた。
ザハンの手が尻を撫でている。彼が中の張形の動きを制御しているのだろう。
ザハンはルインフィートの性器の戒めを解かずに、革の上から扱き始めた。
「んぐ……う――ッ」
ルインフィートは口内をダルマースに突かれながら苦悶の呻きをもらした。
「ふふ……いい声ですね」
ザハンはルインフィートの声にうっとりと聞き入り、その手を乳首へと移した。
ルインフィートは両方の乳首を執拗に嬲られ、下半身は道具で責められ、口は男根に犯されている。
二人の男に挟まれて、冷酷に身体を責めたてられ、そしてなによりも心を蹂躙されている。
耐えられずにルインフィートは、顔を離された瞬間に声を上げてぼろぼろと号泣し始めた。
「ああッ……うう――!」
「ああ、泣いてよがっていますよ」
ザハンの声がこの上なく冷たく響いた。
「貴方のその涙に免じて、いかせてあげましょう」
ザハンはルインフィートの前の戒めを取り外した。その瞬間に、じわじわと滲み出るようにして液体が漏れ出した。
「こちらも取り出してあげましょう」
中の張形が取り出された。ルインフィートは息を吐いて、異物感が去ったことに安堵する。
しかし安心したのもつかの間、ルインフィートはうつ伏せにされ、腰を抱えられて先ほどまで口を犯していたダルマースのそれを肛門に挿入された。
「あ――アアッ……!」
熱く、固い塊で身体を抉られ、ルインフィートは喘ぎ声を漏らした。後ろ手に拘束された腕がギリギリと痛んだ。
「私も仲間に入れてください」
ザハンに頭を掴まれて、ルインフィートは再び男性器を咥えさせられた。
「私をいかせてくれたら、拘束を解いてあげましょう」
ルインフィートは不自然な体位で、腰を激しく突かれながら必死でザハンのものをしゃぶった。
しかし下半身をダルマースに激しく扱かれて、ザハンをいかせる前に一人で達してしまう。
「いけない子ですね。まだまだしつけが必要なようです」
ザハンの冷たい声に、ルインフィートは身震いする。ルインフィートは再び口枷を付けられ、張形を挿入され、性器を革と輪で拘束された。そして、部屋を支える太い柱にはりつけられた。
「おあずけです」
「残酷なことを」
ザハンの仕打ちを、ダルマースが非難する。しかしその表情は微笑みを浮かべ、決して本気ではないことが掴み取れた。
ルインフィートは柱に括られたまま、ダルマースとザハンが絡み合うのを見せ付けられた。
既に何も考えられず、身体を苛む甘い痺れに全てを支配されていた。
ザハンをひとしきり抱いた後、ダルマースがルインフィートの側にゆっくりと寄ってきた。ルインフィートは疲労のせいか意識を手放してしまったようで、ぐったりとうなだれていた。
「かわいそうに、落ちてしまったぞ」
ダルマースはルインフィートの頬を軽く叩いた。しかし、ルインフィートは軽く頭を揺らしただけで、目を覚まさなかった。
ダルマースは意識のないルインフィートの口枷を外した。たまっていた涎がぽたぽたと垂れ落ちる。
「王子……」
ダルマースは眠る王子にそっと口付けた。
「お前は俺の人形だ」
翌朝、ルインフィートはザハンの部屋で目が覚めた。酷く頭が痛み、何も考えられず、昨日の記憶がごっそりと抜け落ちていた。
優しく微笑むザハンがやけに不気味に感じられ、ルインフィートは逃げるようにしてその場を去った。
自分の部屋に戻ると、ハルマースが朝食を用意して待っていた。
「無事戻ってこれてよかったな」
ハルマースはルインフィートに微笑み、優しく体を抱きしめた。
「う……ん」
ルインフィートはしばらくハルマースから離れなかった。
おわり