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ジュネ夫君の決意・後
 熱い湯を浴びながらコータは考え事をしていた。
 ジュネのことは好きだ。しかしやっぱり男であることが納得いかないのだ。きっと本能的に同性愛というものを拒否しているのだろう。
 しかしジュネのことは好きだ。
 一見女性のようにも見えるのだが、性格も下半身もまっとうな男だ。世話好きで面倒見が良いことも、人をからかって楽しむ小悪魔的なところも含めてジュネのことは好きだった。
 だけどジュネは男なんだ……と、想いが堂々巡りしてコータはどうしたらいいのか分からなくなっていた。
 求婚を断ったらジュネは自分の元から去ってしまうのだろうか。
 そう考えたらコータはやっぱり寂しさを感じずにはいられなかった。

 不意に夕刻の行き倒れの男の事が気になりだした。ジュネにとってあの男は特別なんだろう、コータはそう直感していた。
「クソッ!」
 男が男に嫉妬するなんてどうかしてるとコータは頭を振った。もやもやと悩んでいるうちに、風呂場の戸が空けられ、ジュネが勝手に割り入ってきた。
 湯気に霞む彼の裸体がコータの目には眩しく映った。なんでお前は男のくせにそんなに奇麗なんだよとコータは心の中でジュネを呪った。
「コータ君、一緒していいかい?」
 微笑むその姿が悪魔か何かのように思えてきた。
 コータはいよいよ考えることが苦痛になり、本能のまま彼を抱き寄せた。生々しく肌の感触が伝わってくる。湯を浴びていたせいかジュネの肌はひんやりと感じられた。
 やわらかい女性のものとは違う、無駄な脂のない滑らかな胸が密着した。
「ダメだ……俺はやっぱりお前が好きだ」
 観念したように吐き捨てると、コータはジュネの唇に軽く口づけた。
 コータはすぐに離れようとしたが、ジュネはコータを離さなかった。角度を変えジュネから深々とコータに口付けし、舌を差し入れた。
「んんっ……」
 コータの思考は完全に停止した。
 求められるまま口付けを交わしているうちに、下半身が不吉に高ぶってくるのを感じ始めた。ジュネが男であることなど、もうどうでもよくなっていた。
 コータは衝動を抑えきれなくなり、ジュネを抱えて浴室から出て、寝台に裸のままの彼を横たわらせた。
 ジュネは熱っぽい目でコータを見つめ、誘うように腕を伸ばした。促されるままにコータはジュネの上に跨り、首筋に口付けた。
 しどろもどろの手つきで触れてくるコータにジュネはもどかしさを感じ、彼の腕を掴んで引き寄せた。そしてジュネは起き上がり、コータを組み敷いた。
「お、おい……」
 コータはぎょっとした。ジュネの手がコータのものを掴んでいた。
 ジュネは意地の悪い微笑を浮かべると、おもむろにその手の中のものに舌を這わせた。
「やめ……お前何してやが……ッ!」
 コータの制止を聞かずにジュネは彼のものを頬張り顔を上下させた。今まで感じたことの無い感覚に戸惑い、時折卑猥な粘着音が聞こえてきてコータは気が遠くなりそうだった。
 上品で美しいと思っていたジュネの顔が酷く淫猥なものに見えた。
「やめろっ……で、出ちま……」
 コータはたまらずジュネの頭を掴んで離した。耐え切れずに先端から白濁がほとばしり、ジュネの顔にねっとりと絡みついた。
「あっ……す、すまねえ……」
 コータは肩で息をしながら上体を軽く起こし、ジュネのほうを伺った。
 ジュネは妖しい微笑を浮かべながらコータの精を指で拭き、舐めとっていた。彼の頬は紅潮し、悩ましげに息を乱していた。
 コータはぞっとして息を飲み込んだ。
 ジュネは脚を開き、コータに自らのそそり立つ男性器を見せ付けた。
「俺にもしてくれないか?」
 コータはぎょっとして敷布を握り締めた。ジュネはその手を掴み自らの股間に引き寄せる。
「握るのはこっちだよ」
 大胆なジュネの行動にコータは思考が麻痺してしまい、目が宙を泳いでしまっている。身体は固まってしまい、言うことを聞かなくなっていた。
「コータ君」
 緊張を察し、ジュネは握り締められたコータの拳をこじ開け、自らの性器に絡ませた。しっとりとした粘膜の感触にコータは身じろぎした。
 そんなコータにジュネはいよいよ痺れを切らし、きつい形相で睨み付けた。
「出来ないなら君の尻を使わせてもらうよ?」
 そう告げるとジュネはコータの尻に手を這わせ、肛門付近を指でなぞった。
「うわーっ! やめろ!」
 コータは飛びのいて後ずさった。そんなコータの反応を見て、ジュネはため息をついた。

 しかしコータはジュネを落胆させたのを申し訳なく思ったのか、恐る恐るだが再び彼の股間へと手を伸ばした。
 萎えかけてしまったそれをしっかりと掴み、意を決して上下に動かしてみた。ジュネの口から微かに甘い吐息が漏れる。
「コー……タ君……」
 ジュネはコータの首に手を回し、自らの下半身に顔を引き寄せた。
 何を求められているのか察したコータは、膨張を始めたジュネの性器に恐る恐る舌を這わせた。そして自分が先ほどしてもらったように、口に含んでみる。
 先端を舌で舐るとジュネの身体が微かに震えるのを感じた。
 自分の奉仕でジュネが感じていると実感したコータは、もっと良くしてやろうと懸命に彼のものをしゃぶり始めた。
 最初に感じた羞恥や戸惑いは消えていた。空いた手を伸ばし、脇腹を撫で上げ乳首を掴んで弄ぶとジュネはいっそう息を乱し甘い声を漏らした。
「はぁ……はぁ……っあ……ッ」
 ジュネは躊躇いもなく、コータの顔をめがけて精を放った。
 独特の生臭さにコータは咽かけ、顔を背けたくなったが、涙目になりながらもなんとか堪えてジュネの精を受け止めた。
 ジュネは甘い痺れの余韻に浸っているようなうっとりとした眼差しをコータに向け、頭髪を優しく撫でた。
 コータもまた荒い息をしながらべとべとに汚れてしまった顔でジュネを見上げた。ジュネにはコータの瞳が傷ついた子犬か何かのように見えた。
「ごめん」
 ジュネはコータの顔に付着した白濁を指で拭うと、おもむろに自らの後ろの窄まりへと指を伸ばした。自ら指を挿しいれ慣らしているその姿をコータは呆然と見つめていた。
 ジュネは自ら前のものも弄り出し、再び息を乱し始めた。
 コータはそんなジュネの淫靡な光景に魅入られ、ごくりと固唾を飲んだ。
 恐る恐るジュネの身体に手を伸ばすと、強い力で引き込まれてコータはまたジュネに組み敷かれてしまった。
 コータはジュネに跨られ、首筋を舌で攻められ乳首を指で弄ばれた。片方の手は下肢に伸ばされ、押し付けられたジュネのもの共々に雄を揉み扱かれた。
 こみ上げる甘い痺れに耐え切れずコータは身体をしならせた。
「やめッ……あ……ッ……クッソ……!」
 自分よりも小柄な男性になすがままにされてコータは急に自分が情けなく思えてきた。
 そしてとある恐怖が心の奥底から沸いて来るのを感じた。
 このままでは自分が後ろを掘られるのではないかと。意を決してコータは絡みつくジュネの腕を振り解いた。
 ジュネは意地悪な微笑を浮かべ、コータの頬に手を伸ばし撫でた。
 コータの顔は恥辱に紅く染められ、無意識のうちに溢れていた涙と汗に濡れていた。
「いい表情だよ……そそられる」
 コータはもうダメだ掘られると思い、観念したように自ら足を開いた。
 しかしジュネは微笑を浮かべながら、コータのそそり立つ男性器の上に跨り、ゆっくりと腰を降ろした。
「う……あッ……!」
 圧倒的な圧力にコータは悲鳴を上げた。
 ジュネもまた苦しそうに顔を歪め、息を詰まらせている。意地悪な微笑みは消えていた。
 深くまで腰を降ろすと、そのままジュネは動けなくなってしまった。想像以上の異物感に脳がこれ以上身体を動かすことを拒否してしまった。
「ど……しよう……」
 ジュネは熱に浮かれたまなざしをコータに送った。コータはわけも分からず本能的に腰を突き上げ、ジュネの内部を更に貫いた。
「あッ……!」
 ジュネは身体を仰け反らせた。余裕のなくなったジュネと対照的に、今度はコータが余裕の微笑みを浮かべ始めた。
「無理すんじゃねえよ……」
 コータはジュネの腰を掴み、上に引き上げさせた。
「やっ……!」
 磨耗感にジュネは身を引き裂かれる思いをした。
 コータは彼から自らを引き抜くと、下に横たわらせて組み敷いた。そして萎えかけてしまった彼のものに指を絡ませ、扱いてやるとジュネはたちまちに先ほどまでの高揚を取り戻した。
 先端から滲み出た先走りを後ろに塗りこめて、指でゆっくりと内部を慣らした。ジュネは身を捩じらせ、涙を浮かべてコータの背中に手を伸ばした。
「早く……来てくれ……」
 しかしコータは懇願するジュネの頼みを聞かずに、執拗に指で彼の内部を焦らした。
 先ほどまで主導権を握られていたのが悔しかったのだろう。コータは急に男らしさを取り戻していた。
 骨ばった長い指が中で蠢き、ジュネはたまらず甘い声を出してしまう。
 コータは指で焦らすのを止めて、己の怒張しているものをそこにあてがった。

 ゆっくりと傷つけないように挿入すると、ジュネは身体を強張らせてコータの背中にしがみついた。
 息がつまり呼吸をするのも辛いが、例えようのない充足感にジュネは身震いした。
「動くぜ……」
 コータもまた辛く切ない表情を浮かべ、ジュネの前のものを扱きつつ腰を動かし始めた。
「あぁ……ッ!」
 最初は辛く苦しく感じられた腰の異物感が熱をはらんでジュネの脳髄を襲った。
 コータも吹っ切れたのかようやく気分が乗ってきて、一心不乱に腰を動かしジュネを突き上げた。
 目の前の人物が男であるということはもはや気にならなくなっていた。
 自分の前で端正な顔を歪めあられもない姿を晒すジュネのことが愛しくて堪らなくなっていた。
「好きだ……お前が好きだぜ……!」
「コータ……ぁ……ッ!」
 ジュネは突如として激しくなった腰の動きに半泣きに陥りながらそのまま絶頂を迎えた。がくがくと腰が痙攣し、精液が勢い良く溢れ出し腹に降りかかった。
「ああーっ……」
 先端からほとばしる白濁を更に絞リ出すようにコータはジュネを突き上げた。
「オレもイクぜ……」
 腰のものが引き抜かれようとするのをジュネは察し、自らまたしがみついた。
「中に……中に出してくれ……!」
「クッ……!」
 コータはそのままジュネの内部に精を注ぎ込んだ。ジュネは悦びに打ち震えるように身体を震わせた。
 二人は重なり合い、余韻に浸るようにお互いを抱きしめあった。乱れた呼吸を整えつつ、コータはジュネの首に腕を回して頭髪を撫でた。
 ジュネは微笑みを浮かべながらコータの肩に顔を寄せた。
「これで君も立派にホモだね」
「オレはホモじゃねえっつうの」
 コータは軽くジュネの頭を小突いた。
「お前だけは特別なんだよ」
 コータは自分に言い聞かせるように呟いた。実際他の男を好きになったりせず、相手にしても勃たないだろうという確信があった。
 そんなコータにジュネはまた意地悪く微笑みかけた。
「じゃあ俺が君の身体を開発してあげる。
 今度は俺が後ろを掘るよ」
「か、カンベンしてくれ!」
 コータはたじろぎ飛び起きてジュネから身体を離した。しかしジュネは冷酷に彼に告げる。
「さっきは俺の前で脚を開いたじゃないか」
「さっきのは……! その……成り行きで……!」
 コータは必死に否定したがジュネは容赦なく言い放つ。
「本当は俺に犯されたかったんだろう?」
「んなわけあるか!」
 コータは頬を真っ赤に染めて拳を握り締めた。
 ジュネはこみ上げる笑いを抑えきれずに声を出して笑ってしまった。
 コータはまた自分はからかわれているんだと思ったが、ジュネはきっと本気なんだろうとも思い薄ら寒い気持ちになった。
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