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ジュネ夫観察記

青字:父親ザハンの添削


★月▲日 晴

 今日は、蒸し暑い。ジメジメしていやなかんじだ。
 こんな日はライとプールにでも行くのがいいだろう。あわよくば水着をぺろっと剥いちまって……エフフフフフ。←逆に剥かれるのがオチですよ
 人の恋路にちょっかい出すほど俺も暇ではないんだがな。もたもたしているうちにあのオンナにライが食われかねん。
 うまいメシを確保するためだ、手っとり早く片付けてライとイチャイチャしてやろう。
 まず何をするにも敵を知るのが一番だ。今日はあの家来の事を調べる事にした。
 聞くところによると奴の本名はハルマース・ゼノウス。サントアークの将軍様の息子……なんだ、オヤジの愛人のせがれじゃねーか。
 やつもジュネ夫のように、アホヅラ王子様の世話で主婦業をやっているらしいが……なんだ、これがウワサのWフリンってやつか!!←勘違いです
 サントアークの将軍はとんでもない大悪党だっていうけど、息子もロクなもんじゃないんだな。
 とりあえず張り込み調査をしようと思って、やつらが借りているマンションに乗り込んだ。冒険者のクセしやがって、マンション住まいたぁーいいご身分だな。薄暗いボロアパートにひっそりとくらしている、コテツのやつを見習え。
 しかし、行ってはみたもののそこからが問題だった。いっちょまえにセキリュティの強いところに住んでやがるもんだから、中に入って奴の私生活を覗き見なんて真似はできない。俺は忍者じゃねえし屋根裏があるわけじゃないからな・・。
 しかしそこは俺様の魔力のみせどころだ。木陰に身を隠し、瞑想に入ってひょひょいのひょいと意識を部屋の中に飛ばして見せた。
 そこで見たやつらの生活は……うちとあまり変わらなかった。
 ジュネ夫と家来の行動は一緒だ。いや、やつの行動はジュネ夫以上だ。いくらなんでも風呂の面倒までジュネ夫はやらない。体ぐらい自分で洗え!アホ王子!!
 しかもなんだ、あの家来のコカンのモノは……。隠していてよく見えないがかなりデカイ。体はヒョロイくせに、デカイ。
 ああそうか……兄貴がこいつが嫌いな理由がわかったぞ。大きさで負けているから悔しいんだな。
 しばらくすると家来は俺の気配に気づいてしまったらしく、窓を開けてきょろきょろとあたりを見回しはじめてしまった。やばい、見つかってあのデカイモノで掘られでもしたらたまらん。←その心配はありません偵察はやめて速攻家に帰った。
 今日の偵察でわかったこと。
 家来はジュネ夫とよく似ている。似たもの同士、気が合うんだな。
 つまりは同類憐れみの令だ。←意味不明です
 そしてたぶん兄貴は、家来のモノがデカイので劣等感を持っている。
 だから家来が嫌い。
 家来の親父の将軍様はたぶんもっとデカイ。だから俺のオヤジは将軍様に夢中だ。←下品ですよ

★月*日 快晴

 今日はすんごくいい天気だった。ああ、こんな日はライとのんびり釣りにでも行きたいな……二人きりで。オンナ(ローネ)はハリにくっつけて魚のエサにしてやるがよし。まあ、やつをエサにしたところで、サメすらも逃げていきそうな気がするがな。←それも言えるかもしれません
 しかしジュネ夫と家来の関係は、兄貴が心配するほどの進展もないのではないかと思えてきた。二人とも毎日家事で忙しいし、家来はウスラバカ王子にべったりだ。
 ジュネ夫を観察してもつまらないので、今日も家来の方を偵察することにした。
 マンションから出てきたふたりの後をつけていくと、いつも冒険者がたむろっている酒場にたどり着いた。
 そこで奴らは兄貴とジュネ夫と合流して、これから地下迷宮に稼ぎにゆくところらしかった。
 困った、いくらなんでもダンジョンの中までは偵察できない。一人であんなとこに行ったら死んでしまう。
 でも、まあ、俺にこんなめんどくせえ仕事をよこした張本人の兄貴がジュネ夫についているんだから別にいいだろう。
 とっと帰ってライと遊びにいこうと思ったその時、柱の陰に隠れていた俺をめがけてクナイが飛んできやがった。
 クナイを投げたのは、家来だった。どうやら俺を王子を狙う不審人物だと思ったらしい。なんてやつだ、10mは離れていたぞ。とんでもない洞察力だ。びっくりして避けて飛び出した俺に向かって、またクナイが飛んできた。こいつが忍者将軍のせがれだってことをすっかり忘れていた。
 偉大なる王子様が俺だってことに気づいて家来を止めなかったら、俺は死んでたな。ジュネ夫はかっこいい家来君にときめいて目が虚ろだったし、兄貴は蒼白になってかたまってやがった。いざと言う時に俺の兄弟は役にたたない……。
 家来はなんで俺がこのところコソコソ探っていたのか問いただしてきた。ジュネ夫まで一緒になって俺を非難しはじめた。冗談じゃない、なんで俺がいじめられなきゃいかんのだ!!←いじめではありません
 俺は言った、言ってやった、兄貴の前でことのいきさつをすべて……。もうこんなことはとっととやめにしたかった。俺も暇してるワケじゃないんだ!!
 俺はガーラ兄貴の顔面蒼白で今にも自殺しかねない表情を期待した。しかし、兄貴の奴、すっとぼけやがった!!なんてやつだ、兄貴の本性が見えた瞬間だった。兄貴は俺に、こう言いやがった!!
『なにバカな事を言っているんだ。
 いくら女みたいな風貌をしているからって、ジュネが男に興味がある訳ないだろう?
 俺に頼まれただなんて、よくそんなでたらめが言えるな。』
 でたらめなのはテメーだ!! くそ兄貴!!
 顔面蒼白になったのはジュネ夫のほうで、拳を握り固めていた。
 幸いなことに誰もが俺の言葉の方を信じたらしく(当然だ!!)、家来がひときわガーラ兄貴に冷やかなまなざしを浴びせていた。グレート王子様は、頭がよろしいので意味がよくわからなかったらしくて、にこにこしていた。この緊張感の中、やつは偉大だ。
 そしてジュネ夫は兄貴をパーで殴った。グーじゃなかっただけ運がよかったと言えるだろう。
 ジュネ夫は兄貴に恨み言を吐くと、金髪を振り乱して走り去った。その後を、家来と王子様は追いかけて行った。
 取り残された兄貴は俺に、やつあたりしてきた。ヘマやりやがったなこのやろうと。
 俺は殺されかけたというのに、なんて野郎だ。自分勝手にも程があるぜ!! これだから外ヅラばかりいいやつは嫌いだ。
 そして兄貴もジュネ夫が走り去って行った方向へと走っていった。兄貴のことだ、口八丁手八丁でうまくまるめこむにちがいねえ。
 しかし本当の修羅場は、夜からだった。
 あれからあの4人の間で、なにがあったのかは知らないが、ジュネ夫の機嫌は直っていなかった。晩飯も、やっぱりおかずが焦げていた。
 夜な夜な二人だけで話しがしたいと、ふてくされ気味のジュネ夫はガーラ兄貴を、自分の部屋に連れ込んだ。
 それからどうなるか気になったんだが、どうにもこうにも眠くて、俺は寝てしまった。駄目じゃないですか
 次の日、目が覚めたら……俺のベッドの中に兄貴がいたんだ!!
 俺はビビッた!! もしかして、寝ている間に掘られたのか!? しかし、別にケツは痛くなってなかった。掘られるとスンゲー痛いらしいからな。痔主になるのは、ごめんだ。

 あのあと、どうやら二人は壮絶な兄弟喧嘩をしたらしい。
 ケツが痛いのは、どうやら兄貴の方らしかった。
 キレて爆発したジュネ夫に、掘られたようだ……。
 兄貴を掘って喜ぶ奇特な奴は、ルイムの王様ぐらいだと思っていたが……そうか、ジュネ夫はそいつの血をひいているからな……。
 早く寝てよかったと思う。兄貴が男に抱かれて悶絶する姿なんてみたら、きっとこれから一生メシが喉を通らなくなりかねんからな。←なかなか、セクシーかも知れませんよ
 ジュネ夫はあの長かった髪をバッサリとやってしまって、こころなしか男前になっていた。

 それからジュネ夫は、家を出ていって帰ってこなくなってしまった。
 おいおい!! これからどうするんだ!!
 メシの支度は!? 洗濯は!? 部屋の掃除は!!?
 いなくなるなら、ガーラ兄貴がいなくなっちまえよ!!
 ジュネ夫もいくらなんでも、男にふられた(推定)くらいでそんなにムキになって怒ることねーじゃねえかよ!!
 それとも、俺の知らない間になにか別のことでジュネ夫を追い詰めるようなことを言ったのだろうか、アホ兄貴は。

 ともかく、ジュネ夫の良心にかけてみることにした。
 あいつがいなくなったら、人間らしい生活が送れなくなってしまう。←まったくです
 兄貴のバカヤロウ!!  めんどくせーことになっちまったじゃねえかよ!!
 結局いったいなにがやりたかったんだ!!
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