暴露
「い……痛い――ッッ!!!」
ルインフィートは思わず絶叫した。下から突き上げられるようにして、彼の内部にガーラの男性器がねじ込まれた。つい先程まで彼の愛撫にとろけていたルインフィートの身体が、悲鳴をあげる。
強烈な異物感と、尻が裂けてしまうのではないかと思えるほどの、引きつった痛みが身体を駆け巡る。
「うっ……動かしたら殺す! 殺してやる〜〜!!」
迫力のない涙声でルインフィートはガーラに訴えた。しかしガーラはルインフィートの悲鳴を聞いて逆に興奮したのか、彼の中のものを更に硬直させていた。ガーラはルインフィートの背中に覆い被さり、耳元で甘い声で囁いた。
「いい声だな。もっと聞かせてくれよ……」
ゆっくりと腰が動く。ルインフィートに、身体が内部から引き裂かれるような痛みが走った。身体を貫かれているだけでも苦しいというのに、更に追い打ちをかけるようにガーラに背中に爪をつき立てられた。
「う……ああ――っ……!!」
外からも中からも痛めつけられる。ルインフィートはこのまま自分はガーラにいたぶり殺されてしまうのではないかという錯覚に陥った。
――優しかった彼が、何故こんなことを?
答えは出ない。考える余裕などなかった。
「本当にお前、初めてなんだな……」
ガーラはルインフィートを貫いた状態のまま、彼の頭髪を掴み引っ張るようにして顎をあげさせた。苦しげな声でルインフィートは言葉を発した。しかし、もはや問に答えるだけの思考は残っていない。
「痛い……苦しいよガーラ……。
抜いて……抜いてくれ……よ……」
痛みに耐えながら発せられる途切れ途切れの声色に、ガーラはうっとり聞き入った。
「痛いだけで終わらせるのも可哀想だ。
気持ちよくしてあげるよ、ホラ……」
ガーラはすっかり萎えてしまったルインフィートの性器に、そっと指を絡ませた。巧みな指使いで扱いてやると、ルインフィートの身体が再び揺らぎ始めた。ルインフィートの口から先ほどまでの悲鳴とはちがう、少し掠れてしまった甘い声が洩れ始めた。
「ふあ……あ……はっ……」
力が抜け、快楽を追い始めたルインフィートの様子を見計らって、ガーラは腰を動かし始めた。先ほどまでの強烈な抵抗はない。
ガーラの性器はルインフィートの前立腺を執拗に擦りつけた、腰を支配する甘い痺れが、ルインフィートの思考を麻痺させた。
「いや、やあ……はぁっ……んんッ」
自分でも驚くような、上ずった甘い声が漏れてしまう。身体を支えている膝ががくがくと震えて、ガーラを誘うかのように腰が揺れてしまう。
ガーラはルインフィートの背中に覆いかぶさって、彼の耳を甘噛みした。吹きかかる熱い息にすら、ルインフィートの身体はびくりと反応を示した。
「いい感じにほどけて来たね。お前、素質あるよ。
こっちももうこんなにとろとろだ……」
ガーラの手に握られているルインフィートのそれは扱かれ続けて、先端から液が滲み出し、腹に着きそうなほど固くそそり勃っていた。
ルインフィートは混乱していた。何が何だかわからぬままに操られる身体。与えられる快楽に打ち震え、更なる欲求に飲み込まれてゆく。
ハルマースに知られたらどれほど嘆かれることだろう。こんなにあっけなく堕ちてしまった淫乱な自分を。
「はっ……」
彼の名前を呼びそうになり、ルインフィートはぐっと息を呑み込んだ。
ガーラの腰の突き上げがにわかに激しく早くなり、腰と尻がぶつかる音が響いた。身体を駆け巡る激流のような熱さを、もはやとどめる事ができない。
一際熱いものが、ルインフィートの喉元にこみ上げた。心臓の鼓動は、もう振り切れそうに速い。白い暗闇がルインフィートの目を眩ませた。
「やだ……嫌だ……! あああッ……!!」
ルインフィートは、ありったけの声を出して叫んだ。限界を迎えたそれから勢いよく白濁があふれ出し、ガーラの手と寝台を汚した。同時にルインフィートの身体の中にも、ガーラの精がたっぷりと注ぎこまれた。
「はっ……」
ガーラは軽く息を吐いた。ゆっくりと腰を彼から離すと、中に放たれたぬめりが零れ落ちて、ルインフィートの太腿の内側を伝った。ガーラは彼の髪を優しく撫でた後、手首の戒めを解いてやった。
ぐずぐずとルインフィートはすすり泣きをはじめた。手首の戒めを解かれると同時に、浮かされていた腰が力なく崩れ落ちた。安心したのかルインフィートは、そのまま何も言わずに瞳を閉じた。
「おいおい、まだ寝るんじゃないよ……」
ガーラの冷たい声が響く。ガーラはルインフィートの腕を捕んで、ぐいと引き上げた。ルインフィートの見開かれた瞳は、恐怖に彩られていた。
優雅に微笑むガーラの眼には、狂気が宿っているかのように見えた。
熱の冷めやらぬ身体に、再び覆いかぶさり、太腿を掴んで大きく股間を広げさせた。
「や、やめてくれ……もう……」
「よし……いい表情だ……」
ガーラは完全に狂ってしまっている。ルインフィートはそう直感した。
「ちょっと、やりすぎじゃないの?」
ガーラの背後から突然、女性の声がした。
ぎょっとしてガーラは後ろを振り返った。部屋のドアは見事に解放されていて、そこには金髪の少女がえらく不機嫌そうな顔をして立っていた。
「ろ、ローネ……」
いつからそこに居たのだろうと、ガーラもルインフィートも一気に血の毛がひいていった。
「あんたたちねぇ……。
いま、何時だと思ってるのよッッ!!!」
ローネはそう怒鳴りつけると、一気に距離を詰めて寝台の上にあがり、ガーラの首を掴んで上体を起こさせた。そしてみぞおちあたりに、光の速さではないかと思えるほど素早くて強烈な拳を一発打ち込んだ。一撃でガーラはがくりと気を失ってしまった。それでもなおローネは、兄の脇腹に蹴りを一発お見舞いして寝台から蹴り落とした。
――恐ろしい。
密かに好意を寄せていた娘の前で、全裸という醜態を晒しているという羞恥心よりも、恐怖心の方が上回っていた。自分を強姦していたガーラの様子よりも恐ろしかった。自分も殴られるのではないかと思い、ルインフィートは身体を縮こまらせた。
しかし、ローネは寝台から降りて、ルインフィートに背を向けた。そして彼女は部屋の衣服入れをを探って、中からタオルを引き出した。
寝台の上で縮こまるルインフィートに、そのタオルが投げつけられた。きょとんと顔を上げて、彼は彼女の様子を伺った。
「ローネちゃ……」
「風呂場で身体洗ってくるといいわ。階段降りて右側にある。
あの様子だと中に出されたでしょう?」
「……あの様子って……?」
――一体いつから見られていたのだろう。
ルインフィートの顔面は蒼白になっていた。
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