王子様のおつかい
ルインフィートは、神聖魔法による治療をしてもらおうと思い、冒険仲間の聖戦士ガーラを頼ろうと考えた。
ガーラという男は、サントアークの隣のルイムの元王子だった。彼はその不幸な生い立ちから少々心を病んでいるところがある。
接するときには注意が必要だが、神官としての能力が極めて高く神聖魔法の腕は確かなものだった。
ルインフィートにとってガーラにものを頼むという事は、危険なことだった。それはまるで悪魔と契約を交わすのと同じで、代償を求められるという事が目に見えていた。
ルインフィートはぐっと息を呑み込んだ。友を救うためならどんな試練にも立ち向かわなければならない。
彼は覚悟を決めて、ザハンの屋敷の門の前に立ち、その扉を叩いた。切実に願うような声を扉の向こうにかける。
「頼む、助けてくれ!」
ルインフィートの声に応える様に、屋敷の扉が開けられた。しかし中から出てきたのはガーラではなく、父親のザハンだった。彼はゆったりとした深い青のローブを身に纏い、穏やかな微笑を浮かべている。
ルインフィートは緊張した。ザハンという男は人間ではない。国を一つ滅ぼすことが容易なほどの、底知れぬ魔力を誇る魔人なのだ。
そして何よりも一見息子よりも若く見えるその風貌に、ルインフィートはぞっとする。どうしてコレがアレの父親なのかと。
ザハンはルインフィートの緊張を察してか、彼のほうからルインフィートに問いかけてきた。
「なにかお困りですか?」
雰囲気に年齢が滲み出て、なんとも穏やかで深い微笑がルインフィートの緊張を和らげる。
「あ、あの……」
ルインフィートは
- ここにガーラがいるかどうか、ザハンに尋ねた。
- ザハンに事情を話し、彼に助けを求めることにした。